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2025.03.04
SSS#10 日ASEANカンボジア調査報告
鸿运国际_鸿运国际app_中国竞彩网重点推荐スポーツとジェンダー国際平等研究センター(以下、SGE)は、YouTubeチャンネル『Sport for Social Solutions (SSS)』を運営しています。本チャンネルでは、専門家や行政関係者、アスリートなどの幅広いゲストとともに、社会課題解決のプラットフォームとしてのスポーツに光を当て、情報提供や意見交換を行います。
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SSS第10回目のテーマは「日ASEANカンボジア調査報告」。
フランス植民地を経て、1953年に独立を果たしたカンボジア。しかし、独立後もクーデターや内戦、そしてポル?ポト政権下での大量虐殺と弾圧という苦難の歴史が続きました。歴史の影響を受けて、現在では若年層が国民の多くを占めるこの国の女性?女児のスポーツ参加はどのように捉えられているのでしょうか?
スポーツ庁の再委託事業として、SGEが進める「ASEAN-JAPAN Actions on Sport: Gender Equality」では、日本とASEAN10カ国の政府が協力し、スポーツを通じたジェンダー平等の実現を目指しています。このプロジェクトの主要な取り組みの一つとして、2023年から、日ASEAN諸国の女性および女児のスポーツ参加における課題とニーズを明らかにするための実態調査が行われています。
2023年には、インドネシア、ベトナム、フィリピンの3か国で調査を実施しました。4ヵ国目となる2024年度最初の調査国は、カンボジア。現地を訪問したSGEポスドク研究員の古田映布と宮澤優士がその調査を振り返りました。
カンボジア女性のスポーツ参加の障壁
これまでの調査実施国と同様に、カンボジアでも家事や子育てといった家庭内での役割は女性が担うことが「当たり前のもの」として捉えられていると古田は指摘します。さらに、時代の変化とともに、女性が外で働くようになった結果、家庭内の役割と仕事を両立させる必要があり、女性の負担が増していることも説明しました。
このような背景は、女性のスポーツ参加にも影響を及ぼしています。多くの役割を担う女性たちは、スポーツに割ける時間を確保することが難しく、キャリア形成のために学業にも力を入れなければならないため、学生時代からスポーツ参加の優先度が低くなる傾向があります。
さらに古田は女性?女児のスポーツ参加率が低い理由として、スポーツを継続する環境が不足している点を指摘します。カンボジアでは体育教育に力を入れているため、学生たちが体育の中で身体を動かす時間は比較的確保されています。一方で、スポーツに関連するキャリアの選択肢や女性が参加できる大会は少なく、女性がスポーツを継続するための環境が整っていないのが現状です。古田は「女性のスポーツにおけるキャリアの進め方があまりないのではないかと感じた。今後、その(スポーツを継続できる)仕組みをつくっていくべき」と語っています。
また、インタビューを通じて「女性の地位が低いから女性が家のことをやる」「女性の能力が低いからスポーツができない」という考え方は全く感じられなかったと話し、女性が参加できる「仕組み」をどう整えるかが今後の重要な課題であることを強調しました。
カンボジアで感じた歴史とエネルギー
調査チームは最終日に、プノンペン市内にあるトゥルースレン虐殺博物館を訪れました。元々は高校だったその場所は、ポル?ポト政権下で体制に反する技術者や知識人を強制的に収容する施設として使われ、数多くの命が尋問や拷問の末に奪われました。宮澤は「(施設から)道を挟んで人が住んでいて、街の中心部にあるというのも、これを消そうとしていない、なかった過去にしないという思いを感じた。暗い過去ではあるが、そこから立ち上がり、強みとしてこれからどう良い国にしていくかというの(思い)が感じられた」と語りました。
また、ポル?ポト政権の集団虐殺で多くの中高年層を失ったカンボジアでは、現在の人口の大半が若年層で占められています。宮澤は、比較的新しい国であるカンボジアのスポーツ政策について、「制度がまだ十分に整っていない分、これから何でも作り、変えていく可能性がある」とその将来性を感じていることを示唆しました。
教育の一環としてのスポーツ
カンボジアでは、スポーツは教育関係の官公庁に位置づけられています。古田は、カンボジアが教育に熱心に取り組み、スポーツをその一環として推進していることに対し「若い力で国をつくり上げていくという強い思いを感じる」と話します。スポーツには教育的な要素があると認識されているからこそ、女性や女児のスポーツ参加を推進していくことの必要性にも触れました。
本事業で実施した今年1月のワークショップでも積極的な姿勢を見せたカンボジア。
古田は「スポーツ政策から、そのあと政策をどう現場に落とし込んでいくのかというところの仕組みづくりがこれから求められているところ」と、今後への期待を寄せました。