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ニュース

  • 2024.05.22

    【開催報告】編文研シンポジウム「編集文献学の国際比較—ポーランド?台湾?ドイツ?日本」

2024年3月12日(火)、本学3号館321教室にて、国際編集文献学研究センター主催によるシンポジウム「編集文献学の国際比較—ポーランド?台湾?ドイツ?日本」を開催しました。当日、本学学生?教員だけでなく、様々な研究機関から幅広い分野の大学院生?研究者を中心に、多くの方々にご参加いただきました。今回のシンポジウムでは、表題の通り、様々な国?地域の代表的な作家のテクスト編集をめぐる状況や展望をめぐって多くの議論がなされ、有意義かつ実りあるものとしてイベントは成功裏に終了しました。

シンポジウムでは、チェスワフ?ミウォシュ、魯迅、ヨハン?ヴォルフガング?フォン?ゲーテ、夏目漱石のテクスト編集の歴史や現状について、計4名の先生方にご報告いただきました。

マテウス?アントニウク先生(ヤヴェウォ大学教授)には、ミウォシュの詩「四季」について、フランスを中心に発展してきた生成批評(critique génétique)、そして精神分析学の観点から、当該詩人の手稿を読み解きつつ、その読みを共有するための「生成版」の必要性について論じていただきました。



続いて易鵬先生(國立中央大學教授)には、2020年に出版された、全78冊におよぶ『魯迅手稿全集』が編集の立脚点として据えている生成批評、特にavant-texteと?uvreについて理論的に考察しつつ、同全集の位置づけ、そして今後の編集が担うべき方向性についてご発表いただきました。


カトリン?ヘンツェル先生(キール大学図書館職員)には、ご自身が編集に携わられたゲーテ『ファウスト』のデジタル版で表示可能な、作品の執筆過程を実際に示しながら、それを読み解く醍醐味を報告しつつも、当該デジタル版は完璧なものではなく、編集文献学をめぐる各国の潮流に目を配り、よりよい編集のあり方を模索し続ける必要性を論じていただきました。

最後に明星先生には、漱石『こころ』の初出から近年の全集出版までの歴史を確認することで、日本のテクスト編集の実践や議論における現状、問題を概観し、日本の文学研究の発展のために、西欧を中心に展開されている編集文献学の受容を批判的に行うことの重要性についてご報告いただきました。また、日本のみならず世界の文学研究、人文学の発展のため、編集文献学に関する議論が国際的に展開されるべきである旨を述べられ、本シンポジウムの意義、目的を確認されました。


続くディスカッション、質疑応答では、テクスト編集やその出版をめぐる背景としての社会からの要請や出版社との関係といった各国特有の事情、ダンテやプラトンなど、写本を基盤とする古典から中世にかけてのテクスト編集と、手稿が遺っている近代以降の作家?作品のテクスト編集の違いやそれらの議論を分けずに交流していく重要性、フランス流の生成版とドイツに起源を有する史的批判版との違い、そしてそれらコンセプトの異なる複数の編集版が並行して存在する必要性など、多岐にわたる論点について、熱のこもった議論が交わされました。


なお、当日は各発表と質疑応答の合間にコーヒーブレイクが、およびシンポジウム終了後に懇親会(於:8号館Lounge#08)が催され、活発に交流が深められました。

国際編集文献学研究センターでは、今後も定期的に編集文献学にかかわるイベントを開催いたします。その際には、改めて本学サイトでお知らせしますので、ご興味?ご関心のある方は、ぜひご参加ください。