(調査報告)ベトナム中小企業のヒアリング調査
経済研究所客員所員 福島章雄
8月16日から26日まで、私立大学研究ブランディング事業の研究活動としてベトナムへの現地調査研究を行いました。調査対象は将来日本企業のパートナーに成り得る現地中小企業と工業団地、金融機関等です。調査には私のほか、客員所員で産業能率大学の都留先生、東京富士大学の青山和正先生に参加?御協力をいただきました。
まずハノイでは5社の中小企業を訪問しました。業種は水道のバルブやコンクリート、木製家具製造等、様々ですが、何れもJICAが現地で主宰する「経営塾」の卒業生で日本的な経営手法を学び、実践されています。「カイゼン」や「5S」といった経営手法は日本の中小企業ではごく当たり前のことですが、元は社会主義国で民間中小企業が出来てからまだ日の浅いベトナムでは新鮮に受け止められ、導入した際の効果も劇的に表れるようです。一方で今までの考え方とは一線を画すことから、管理職、ワーカーも含めた理解が得られるには時間がかかるようです。
ホーチミンでは企業訪問のほか、みずほ銀行ホーチミン支店で日本からの投資動向や中小企業進出の現状をうかがいました。直近のベトナムへの外国からの直接投資額では日本は第2位ですが、ものづくりを目的とした工業団地への進出は一段落して最近は再投資や拡張、造成がもっぱらとのこと。半面、外食や小売り、サービス、ITや不動産といったところへの投資が急増しているそうです。実際、イオンモールや高島屋の開店は日本でも大々的に報じられましたが、7区では外国人向けの居住区やショッピングモールを含んだ大規模な開発が進んでおり、少々過熱気味な感じです。
ベトナムにいつ行っても驚かされるのはオートバイの通行量の多さです。今回はそれに乗用車が急激に増え渋滞に拍車がかかった感じです。これにはスマホの浸透とUberやGrabといった配車サービス?アプリの影響が少なからずあるように思います。ベトナムでは国民が豊かになりモータリゼーションがいつ始まってもおかしくない状況にあります。それを見越して日本からもトヨタやホンダなどが現地進出していますが、交通インフラの脆弱さを理由に今までは抑制されてきました。それがUberなどの進出により一気に火が付いた感じです。今回、実際に都留先生にスマホを用いて何度か手配いただき、乗車しましたが、付近の車の状況や車種の指定、現金決済の煩わしさからも解放されることから、今後益々普及に拍車がかかると思います。報道ではハノイやホーチミンではすでに従来タクシーの数を上回っているとのことで収入にも影響を与えています。
今回の調査を通じて、ベトナムの中小企業及びベトナム経済がダイナミックに変化していることを実感できました。