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文化史実習II報告


 平成24?25年度の文化史実習IIは、千葉県南房総市和田町の仁我浦?和田?小浦?真浦地区を対象に実施しました。南房総市和田町は房総半島の南東に位置する、太平洋に面した集落です。和田漁港を中心に漁村的な密集した集落が形成されている一方で、海岸段丘上では温暖な気候を利用して花卉栽培などに従事する集落が連なっています。
房総半島南部は、関東大震災までの数次の大地震による隆起により海岸段丘が発達し、それに応じて集落が海岸域まで拡がり、主たる生業も地域ごとに分化していったという歴史的な展開がみられます。こうした生産活動の差異が、地域ごとに異なる慣習や習俗を発生させることになりました。
本実習では、こうした歴史的背景を先行研究等で確認をしたうえで、現地での共同調査に臨みました。両年度ともに、夏季休暇中に受講者全員参加による4泊5日の本調査に加えて、有志による1泊2日の予備調査と補充調査を実施しました。現地調査に際しては、受講者各自が主に担当する民俗事象を決め、現地で話者となる人たちを探すことから始めました。その準備として、担当教員による各区会での事前説明や、実習実施前の回覧板での周知なども行いました。調査でお話をうかがった方々に、礼状を送付することをとおして、受講生自身に実習や調査の趣旨を理解してもらうように配慮しました。実習期間中は地域の全体像を理解し共有するために、毎夕食後、全員の調査事項の報告を行いました。
本調査期間中に収集した調査データは、後期の授業開始時に全員分のコピーを作成し教材として配布しました。後期の授業では、この調査データの関係性について検討と検証を行い、各自の調査事項についての執筆作業を行いました。平成25年度の実習については、前年度受講生の作成した原稿も教材として活用して、調査事項の精度を高めるようにしました。その成果物として、平成26年3月に実習報告書『千葉県南房総市和田町の民俗』を刊行しました。この報告書を調査でお世話になった方々に配布するとともに、平成26年6月15日に現地報告会を開催して、調査事項の蓋然性について検証を行いました。