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2024.11.18
2024年10月31日、経営管理論Ⅱ特別講義(担当教員:境 新一)として、弁護士(法務博士)/ハートマウンテン?ワイオミング財団理事長、シャーリー?ヒグチ先生(Dr.Shirley Higuchi,JD)による特別講義「セツコの秘密 ハートマウンテンと日系アメリカ人強制収容のレガシー」が行われました。講演は英語で行われ、近藤 五百子氏が日本語通訳を担当されました。受講生は熱心に聴講し、講演後には2名の学生からの質疑応答もありました。
当講演は、名古屋外国語大学教授の高柳 美香 先生(社会学者?大塚 久雄 先生のお孫様)と担当教員とのご縁とご依頼によって開催の運びとなりました。同講演は、まず東京外国語大学(10月29日)、次いで、鸿运国际_鸿运国际app_中国竞彩网重点推荐(10月31日)で開催するものです。ヒグチ先生は日本でも著名であり、1990年代からニュースにも度々登場され、これまでに明らかにされなかった日系アメリカ人強制収容の実態と真相について、第二次世界大戦中の強制収容所内での生活や家族の苦難や葛藤が鮮明に語られました。直接当事者から語られることは貴重であり、ヒグチ先生の講義を本学でも開催できることは、本学においても教員?学生に貴重な経験となり、大変名誉なことと考えられます。
シャーリー?ヒグチ先生は日系アメリカ人であり、ワシントンDC弁護士会長を務めた経歴を持ちます。2005年以降、亡くなった母の後を継いでワイオミング州に第二次世界大戦中に建設された日系人強制収容所の跡地を保存する「ハートマウンテン?ワイオミング財団(Heart Mountain Wyoming Foundation: HMWF)」役員に就任しました。その後2009年以降は同財団の理事長を務め、2011年には博物館が開設されました。
ヒグチ先生は講義の冒頭で、「第二次世界大戦中に在米日本人や日系アメリカ人がどのような扱いを受けたか知っていますか」と質問をされました。しかし、受講生のなかで手を挙げた人は誰もいませんでした。これを受けて、実際に強制収容所がどのような状況であったか、その解説から講演がスタートしました。
第二次世界大戦によって日本と米国が敵対関係になり、在米日本人たちはハートマウンテン強制収容所の完成まではサンタアニタの仮収容所に一時的に収容され、後にハートマウンテン強制収容所に入りました。当時の米国ではまだ人種差別が色濃く、アジア人の立場はかなり低いものであったため、抗議や反発等もできず、強制的に収容所に入ることとなりました。その際、持っていた財産はほとんど奪われ、所有する土地も法外な安値で売却させられました。ヒグチ先生の家族の場合は、アメリカ国籍を持ち、医療関係者として陸軍の現場に従事していた伯父にあたるジェームス?ヒグチ氏が広大な農場の売却を強いられました。
強制収容所での生活は劣悪な環境下にありました。収容所から反旗を翻した者もいましたが、米国にとって在米日本人は何ら脅威になるものではなかったため、ナチスのホロコースト、アウシュビッツのような虐殺対象にならなかったのは不幸中の幸いと言えるかもしれません。
第二次世界大戦は日本の敗北によって終結し、強制収容所から解放される際には、帰りのバス代程度のお金が支給されたものの、皆は行き場を失っており、路頭に迷う者も少なくありませんでした。ヒグチ先生の家族の場合も例外ではなく、生活基盤を一から再び築き上げて行くしかありませんでした。また、その後の裁判等で支払われた賠償では十分な額は得られませんでした。
自由の国として知られる米国で人権侵害に相当する行為は米国史上最悪の自体ともいえます。当該事態の再発抑止を徹底すること、新しい世代に過去の非人道的な行為を伝承すること、この2つの主な目的のために、「ハートマウンテン解説センター」が建設され、開設セレモニーには被害者やその家族だけではなく、米国の議員も参加しました。
現在では被害にあった家族と米国の議員が協力して人種差別など非人道的な行為が世界で蔓延しないように、コンソーシアムが定期的に開かれています。直接米国の議員とコミュニケーションをとり、党派を超えてアメリカ全体で再発防止の取り組みがなされています。
シャーリー?ヒグチ先生の講演を通じて、戦争がもたらす理不尽さや人権の侵害について深く考える機会をいただきました。戦争の恐怖と偏見により家族や生活、財産までも奪われ、日系人が強制収容所で過ごした過酷な日々の話は、何ら罪を犯していない人々や子供たちが国や社会から排除される理不尽極まりない行いを改めて実感させられました。その一方で、彼らがそれでも希望を持ち、生き抜いた姿勢には大きな感銘を与えられました。また、現在も世界ではウクライナやイスラエルなどで戦争が絶えず、歴史を学び伝えることは、平和な未来を築く第一歩だと強く感じられました。私たち一人ひとりは無関心でいるのではなく、日本人として過去の教訓から学び、平和のために何ができるか考えて行動していくことが大切ではないでしょうか。
◎参考文献:シャーリー?アン?ヒグチ(Shirley Ann Higuchi)『セツコの秘密』
イーコンプレス (2023年3月)