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立川ゼミ

古典と現代

 このゼミでは、経済学の古典を学ぶことで、現代の経済学を相対化すること、さらに経済学という学問自体を相対化することを目指しています。相対化するとはどういうことでしょうか。
 私たちは言語を使ってしか世界を認識することができません。「これは林檎で、あれは梨」というように、言葉を使ってしかモノを区別できません。言葉を口に出さなくても無意識のうちに私たちは言葉で世界を秩序づけています。現代の経済学を学ぶということは、現代の経済学の言葉で(言い換えれば、現代の経済学という眼鏡をかけて)現実の世界を区別できるようになることです。それは、同じ現象を見ても、学ぶ前とはまったく違って新鮮に見えるようになることです。ここに学問をする面白さがあると思います。
 しかし、危険性もあります。ある言語を用いることが他の見方を妨げることにもなるのです。たとえば、日本語を使う私たちにとっては、蜜蜂も雀蜂も蜂という仲間で、蟻とは違う存在です。しかし英語を使う人にとっては、bees (蜜蜂など)とwasps (雀蜂など)とは、私たちにとって蜂と蟻がまったく違うように、違う存在なのです。beesやwaspsは存在しても、英語には蜂という言葉がないのですから、蜂は見ることができません。見ているけれども見えないのです。日本語で認識すると、英語で見える世界が見えなくなるのです。他の言語を勉強して日本語での認識とは違った認識のしかたがあることをはじめて理解できるように、自分の見方だけが絶対ではないことを知るには、つまり相対化するには他の言語を学ぶことが必要です。
 ここから次のことがわかります。つまり、現代の経済学を学べば、現代の経済学の言語で世界を把握できるのですが、それだけでは、かえって自分の見方を硬直化させることになる危険性があるということです。現代の経済学を相対化すること、ひいては経済学という学問を相対化すること、そこに、現代の経済学とは違った言語体系である経済学、とりわけ経済学の古典といわれている経済学を学ぶ意義のひとつがあると思います。それがゼミで目指すことです。どのような古典を取り上げるかは、毎年相談して決めます。

経済学史ゼミ履修モデル
(立川ゼミ)