町村 泰貴 教授 「基本書演習〈民法〉」
教員?学生間の対話を通じて、学生の積極的な授業参加を引き出す授業
氏 名 :町村 泰貴(まちむら やすたか)
所 属 :法学部
職 名 :教授
専門分野:民事手続法、サイバー法、消費者法、フランス法
対象者 :法学部1年生
授業形態:ゼミナール
実施学期:2021年度後期
単位数:2単位
曜日?時限:水曜日?2時限
授業教室:53L教室(21名収容)
履修者数:19名
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当該授業は1年生の必修科目であり、少人数クラスで教科書を読み、グループワークやディスカッションなどを併用して課題に取り組むなど、授業内で様々な工夫がなされている授業である。
授業内容?目的と取材当日の授業について
「基本書演習」は、1 年次後期に開講される必修科目で、憲法?民法?刑法について専門の教員とともに基本書を読みこなし、法律の基本書をいかにして読んでいくか、法律の学び方というのはどのようなものかを学ぶ科目である。
本授業(基本書演習〈民法〉)では、1年次必修講義科目である「民法I(総則)」で使用されている教科書を担当教員と一緒に「読む」ことにより、民法および法律学を学ぶための基本的なノウハウ(条文解釈の方法、判例や学説の取り扱い方、レジュメの作成の仕方など)を身につけることを目的としている。なお、授業は原則対面形式で行われ、講義形式の説明、教科書や配布資料の輪読、予習と課題の提出を前提としたディスカッションなどを併用している。
取材当日の対面授業は、以下の流れで進められた。
■2021年10月27日
授業の流れ
①出席確認後、前回授業の振り返り〈5分〉
②前回授業の課題についての解説〈10分〉
(課題内容:例文の規定制定理由から問題に答え、そのための解釈技法を提案しなさい。)
③最高裁判所裁判官の国民審査についての講義〈20分〉
(国民審査の仕組み、最高裁判所裁判官の出身別分類、過去の訴訟(判決)における各裁判官の意見(立場)などを説明。)
④最高裁判所の判例についての講義〈20 分〉
(最高裁判所のサイトを閲覧し、教科書や「ポケット六法」を用いて、実際の判決文の内容を説明。)
⑤判例を読むグループワーク(グループ分け~作業分担決め)〈35 分〉
(課題内容:判例の事実関係を時系列にまとめ、人間関係の図を作成しなさい。)
■2021年11月20日
授業の流れ
①出席確認〈5 分〉
②判例のまとめ方についての講義〈20 分〉
(最高裁判所判例を参考に、オリジナル教材に掲載された手順に沿って説明。)
③前回授業のグループワークの続き(発表)〈60 分〉
④次回授業までの課題の説明〈5 分〉
取材初日の10月27日の授業は、前半は講義、後半はグループワークという形式で行われた。前回授業の課題についての解説では、教員が多くの学生を当てて、キーワードとなる内容を板書しながら様々な意見を引き出していた。 10万冊に及ぶ国内?海外の判例集?法令集?論文集などを所蔵。それらを自由に利用できると同時に各種データベースを備え、議論やプレゼンテーションの練習などにも対応した多様な学習環境を整備している。
また、講義では、スライドを中心に、適宜、教科書や「ポケット六法」を用いた説明があり、判決文に引用された条文を学生に読ませたり、ポイントとなる内容は板書で強調したりと、学生が積極的に授業に参加する工夫がなされていた。
授業の後半は、教室から法学資料室に移動し、判例集の配架場所等の説明後にグループワーク(1グループ4~5人)を開始。
課題の判例が掲載された判例集を見つけると、次回授業での発表に向けてグループごとに思い思いの場所で打ち合わせが行われ、教員は巡回しながら学生の質問に対応していた。
用語説明
法学資料室
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取材2日目の11月20日は、グループワークの発表をメインに行われた。各グループの発表前に、判例のまとめ方のお手本として、教員から板書やスクリーンを効果的に用いて丁寧に説明が行われた。
その後、各グループの発表が行われたが、発表の合間にも各グループで綿密な打ち合わせが行われていた。
発表後には、教員から判例内容等に関する質問(「判決の根拠となる条文は何か?」「争点は何か?」など)が投げかけられ、各グループの代表者が言葉に詰まりながらも理論的に回答していた。
2日間の取材を通じて、学生全員が集中して授業に参加している姿が印象的だった。学生によると、後期はオンデマンド型の授業が多く、本授業科目は貴重な対面での授業だったことも影響しているようである。また、課題やグループワークを通じて、学生の思考とそれを表現する時間が授業内に複数回あることは良い緊張感を保つ上でも効果的であり、且つ他の学生の意見を聞くことも可能としていること、さらに、学生同士の交流やつながりが深められるなど、対面授業のメリットが最大限に活かされていることがうかがえた。
教員インタビュー(Q&A)
Q.授業のポイントを教えてください。
A. この授業は法律学の学習作法を少人数で学ぶものです。高校までの教科書とは全く違う法律の教科書に何が書いてあり、それをどのように使うのかというところから始まり、民法という科目が何を扱い、どういう問題点をどのように考えるか、教科書と教員オリジナルの教材とを使って授業を進めています。合わせて、判例や文献などの資料の探し方や使い方も習得します。 成果物を別の人が詳細に評価?検証するレビューの類型の一つで、立場が同じ(または近い)者同士の間で行うもの。学生にとっては評価を受けるだけでなく、他者の成果物に対する評価をすることで、自身の成果物の質が向上することも示されている。 学生が何を学習するのかを示す評価項目と学生が学習到達しているレベルを示す具体的な評価基準をマトリクス形式で示す評価手法である。
教材では、法律の条文の読み方や解釈の仕方の練習問題、学習に適した裁判例、そして事例式の問題を用意して、授業では個別に取り組んだり共同で調査発表を行ってもらいます。事例式問題の解答には学生同士がピアレビューをするのに必要なルーブリックを用いています。ピアレビューは、レポートの質を高めるだけでなく、評価者(教員)の目線での評価を経験してもらうことを目的として実施しています。
また、教員が説明するよりも学生が自分で課題に取り組むことを中心にして、教員は、そのような学生の活動に対してフィードバックをすることに力を入れています。例えば、学生から出された意見や質問に対して、あえて質問で返すことによって、主体的な学びを促すようにしています。
用語説明
ピアレビュー
用語説明
ルーブリック
Q. 学生への期待を教えてください。
A. この授業で扱う内容は、基本的な学習の準備作業で、「学ぶスキル」といってもいいです。ここで学んだスキルを使って、様々な法分野に関する問題を発見し、その問題を解決するための資料を探して読み、先生や友達との討論の中で理解を深めながら、法的な解決を説得的にプレゼンテーションすることで、法的な物の考え方を鍛えていきましょう。
学生(先輩)インタビュー(Q&A)
Q. 印象に残っている授業内容はありますか?
A. 東京地方裁判所に行き、実際の裁判を傍聴した授業です。百聞は一見に如かず、テレビでしか見たことが無かった裁判を実見できたことは、とても良い経験になりました。また、裁判官の方のご厚意で、私たちの質問に回答していただけたことは、今でも良く覚えています。
Q. この授業を履修して、その後の学びに何か変化はありましたか?また、後輩たちにメッセージがあればお願いします!
A. 先生の授業を受けていなかったら判例の読み方が分からなかったと思います。読み方を理解してから自宅でも積極的に判例を見るようになり、2 年生以降の学びにとても役立ちました。1年生の皆さん、課題やグループワークが多いので、しんどいと感じることがあるかもしれないけど、あとで活きるから頑張ろう!
A. 判例は難しい用語や独特の言葉遣いが多くて、最初は内容を理解するのが大変でしたが、多くの判例を見ていくうちに、初めて読む判例でも理解のペースが上がってきました。先生の授業での学びが今の私のベースになっていると思います。法律学は固くて難しいイメージがあるけれど、分かることが増えてくると楽しくなってきますよ!
A. 1年生の時にはあまり分からなかった内容が、2年生になったらすんなり理解できたことがありました。きっと民法の基礎的な内容や学び方を丁寧に教えていただいたからだと思っています。1 年生の皆さんには、しっかり授業についていって欲しいです!
※町村ゼミの3年生3名に1年生時のお話を伺いました。
学生インタビュー(Q&A)
Q. 印象に残っている授業内容はありますか?
A. 教科書の要約をして発表した授業です。最初は簡単そうに思ったのですが、いざやってみると難しくて大変でした。クラスメートに分かりやすく伝えるためには、身近な事例を挙げるなどの工夫が必要だと痛感しました。
A. 上記の方と同じ授業です。教科書の約10 ページを1,000 字程度にまとめる作業までは順調だったのですが、他者に伝えることが難しくて、人前での発表はとても緊張したことを覚えています。
A. 代理母契約の問題を取り扱った授業です。反対意見と賛成意見のグループに分かれて意見をまとめて発表したのですが、その意見に対して、先生から厳しい突っ込み(ご質問)をいただいたのをよく覚えています。(鸿运国际_鸿运国际app_中国竞彩网重点推荐の影響で)他の授業ではこのようなグループワークを行うことが無かったので、とても印象に残っています。
Q. この授業のよいところはどんなところですか?
A. 民法の基礎的な部分をしっかり学習できるところだと思います。レジュメを用いた講義やグループワークを通して理解を深めることができました。個人的な意見ですが、先生が分かりやすく丁寧に解説してくださるので、民法が苦手な方でも安心して授業に臨むことができると思います。
A. グループワークを通じて、色々な意見を聞けるところです。各グループの意見を一つの結論としてまとめていく過程も他の授業ではなかなか経験できないことだと思います。また、クラスメートからの質問に対して、自分の意見を論理的に深く考えて回答するようになりました。
A. 難しい法律用語や条文の解釈などについて、身近な事例を挙げて分かりやすく説明していただけるところです。私は民法に対する苦手意識がなくなりました。また、授業中、先生は学生にたくさんの質問を投げかけてくださるので、自分も回答することができますし、クラスメートの意見も聞けるので、とても勉強になっています。
※インタビューは3名の学生にご協力いただきました。