杉本 義行 教授 「2年次ゼミナール」
— 反転授業としての新書要約ゼミ —
氏 名:杉本 義行(すぎもと よしゆき)
所 属:経済学部 経済学科
職 名:教授
専門分野:食料経済学、応用ミクロ経済学
対象者:2 年次(経済学部)
授業形態:ゼミナール
実施学期:2016 年度通年
履修者数:18 名
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授業内容と取材当日の授業状況について
授業の主な目的は、ゼミナール3 年間を通じて、さまざまな身近な社会現象を経済学という道具を使って「自分なり」に考えるスキルを身につけること、としている。学年ごとのステップを設定しており、この授業の対象である2 年次は「基礎力育成期」と位置づけている。前期では“知的”基礎体力としての要約力を、後期では分析の道具となる経済学の考え方の活用を、テキストの輪読とグループワークでの討議を通して学んでいく。
前期の“要約ゼミ”は、ゼミ全体の特色であり、学生の満足度も高い。授業のねらいは、新書の要約を通じて、①要約力を身につけ、②社会に対する関心を広げ、③文章を書く機会を増やすことの3 つだ。とりわけ、資料や文献を読んで、すばやく要点をつかむ力は、卒論の作成だけではなく、社会人としても必須の力だろう。
授業の実際は、毎週1 冊の新書を読み、事前に各章ごとに要約し、感想や疑問点を全員がまとめる。ゼミ当日は、持参したレポートをペアで評価しあい、その後、グループに分かれて感想を共有し、教員の立てた“問い”について議論し理解を深める。授業終了後、教員はルーブリックをもとにレポートを評価し、コメントをつけて返却する構成だ。これを10 週繰り返す。
取材当日は後期の授業のため、経済学を活用して身近な社会問題について考えるテキストの輪読を行っていた。思考方法を身につけるという目的から、テキストを毎週1 章ずつ読み、要約を作成し、グループワークで内容理解を深めるという精読型であり、前期で培った要約力やグループで協働して解決する力を発揮する光景が見られた。
学習到達状況を評価するための、マトリクス形式の評価基準表。被評価者と評価者の双方に基準をあらかじめ提示し、評価の観点を可視化しているため、思考?判断、スキル等のパフォーマンス評価に有効であるといえる。評価者ごとの評価のズレを抑制し、被評価者への答案やレポートのフィードバックを促進する上で有効である。
教員インタビュー(Q&A)
Q. 授業のポイントを教えてください。
A. 10週にわたり、毎週1冊の本を読み、各章の要約?感想?問題点を全員にレポートにまとめて提出してもらう点です。授業ではそのレポートをもとにしてテーマを決め、グループディスカッションを行うことで、内容の共有?理解の向上を図っています。教材を事前に理解したうえで授業においてディスカッションを行うので、「反転授業」と位置づけています。 授業と宿題の役割を「反転」させた授業形態。授業時間外にデジタル教材等により知識習得を済ませ、教室では知識確認や問題解決学習を行う。
前期に課している課題図書は、予備知識なしで読めること、手ごろな価格、適当な分量の観点から新書に限定しています。
用語説明②
反転授業
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Q. 授業の効果が見られた瞬間や実感はありますか。
A. 前期の要約ゼミにおいて、多くの学生が3 ~ 4 冊目から、ポイントが瞬時に分かるようになったと述べており、「要点のすばやい把握」という効果が出ていると感じています。また、本屋に行くようになった、新書を手にするようになった、後で課題の本を読み返している、といった声も聞かれるので、本ゼミでの到達目標が十分達成されていると考えています。
Q. 授業改善のタイミングやポイントについて教えてください。
A. 毎回のリフレクションカードの記入?提出、学期末での振り返り、学年末の振り返り、全員の振り返りの際に記入してもらうカードをフィードバックして共有し、それらの意見をもとにして授業改善に結びつけています。
Q. 今後の課題はありますか?
A. あまり難しい問いではワークが進まないため、よい問いをどう立てるか、を課題として感じています。また、効果測定が十分ではない点も課題です。要約ゼミの効果や評価については、学生から振り返りの自由記述で定性的に得ていたものの、授業外学習時間やコンピテンシーの伸長などの効果について情報収集を行ってこなかった。今年度からは、全学で実施している入学時アンケートの項目に依拠してコンピテンシー調査(間接評価)ならびに授業外学習時間について分析を行い、要約ゼミの効果について検討したいと考えています。
単なる知識や技能だけではなく、技能や態度を含む様々な心理的?社会的なリソースを活用して、特定の文脈の中で複雑な要求(課題)に対応することができる力。用語説明③
コンピテンシー
学生インタビュー(Q&A)
Q. この授業のよいところは?
Q. 履修前後で自分の中に生じた変化はありますか?
Q. 授業準備に充てるのはどれくらいの時間?
取材当日(2016 年10 月25 日)の授業は、下記の流れで進められた。
①授業の狙い
②前回授業の復習:前回授業時に提出されたリフレクションカードで、分からないと指摘された部分について、個人ワークやペアワークを交えて復習。
③ワークを交えた講義:アイスブレイクの手法を用いて、4 ~ 5 人のグループ分け。同様にワークを交えて講義。学生に問いかける場面が多く見られ、反応が少ない場合はペアワーク、短時間のワークを何度も行うなど、学生が主体的に授業に臨むような仕掛けが随所に見られた。
④リフレクション(10 分):用紙への記入ポイントがあらかじめスクリーンに示されており、用紙いっぱいに記入する学生が多くみられた。